「他社は受けてる?」 思わず詰まる面接、こう乗り切れ
採用面接での定番の質問はガクチカ(学生時代に力を入れたこと)だが、予想外の球が飛んでくることもある。最近の就活生は交流サイト(SNS)等で情報収集して模範解答をしっかり準備しているため、「不測の質問」で本音を引き出す狙いもありそうだ。就活生が面接で感じた疑問について、対策を考えてみました。
疑問その(1)「面接で志望動機を聞かれなかった。これって私に興味がないから?」
志望動機はガクチカと並び、面接で必ず話題に上るイメージがある。しかし就活生に取材してみると「全く質問されずに拍子抜けした」という話は思いのほか多かった。
なぜだろう。志望動機を重視しない理由について、ある食品メーカーの採用担当者は「面接に来た時点で志望していることは分かっているから」と答えてくれた。これは限られた面接時間で何を重視するのか、という価値判断の問題だろう。「志望度で合否を決める訳ではない」(人材サービス)という割り切ったコメントもあった。
志望動機とは本来、志望に至った経緯を自己分析や自己PRを絡めつつ話すべきものだ。だが、学生の多くは企業研究の成果を話してしまう。「非重視」企業の多くは、志望動機から「学生の人となりが見えにくい」(採用担当者)ことを残念に思っているようです。
もちろん、志望動機を重視する企業も多い。「入社意欲のレベルを確認したい」(製紙大手)、「本気度を見分ける材料にする」(オフィス家具大手のオカムラ)といった理由を挙げている。
オリックスは、金融や不動産からカーシェアリングまで幅広く事業展開していることを踏まえ、「学生が希望する仕事に食い違いがないようにするため」と説明。ミスマッチを防ぐ狙いで聞いている。また、日本精工は「配属を決める情報として使う」としており、入社後も見据えている。
「熱意ある学生は自分から話してくれる」(採用支援のアイプラグ)という企業もあった。
就活生は質問されなかったからといって気落ちせず、ガクチカや自己PRなどの話題に絡めて話すことも一つの方法だろう。アピール度が上がるかもしれない。
疑問その(2)「他社の選考状況を聞かれたら、正直に言わないとダメ?」
「ライバル企業を受けていることを話せば印象が悪くなるのでは」――就活生からはこんな不安の声もよく聞く。
就活生が複数の企業を受けるのは当然のこと。また、選考が進めば、いずれ他社の状況もおのずと判明することになるので、そこは率直に答えてよいだろう。
ただし、就活生の受け答えから、採用担当者が「うちは本命じゃない」と気付く場合もある。
採用担当者の印象が悪くなる――と心配する就活生が多いようだが、そうとも限らない。「進捗状況を聞き、他社が先行している場合はスピード感を持って採用に動く」(食品宅配のオイシックスドット大地)、「就活生が迷っている場合は、当社の魅力を伝えて必要な追加対応を講じる」(製紙大手)など、自社を選んでもらえるようにギアを上げる企業も多い。
他社の状況を通じ、「企業に何を求めているかを知りたい」(ユーグレナ)という声も聞かれた。志望企業が学生の人となりや価値観を示す情報になるとする見方だ。
また、あるIT系スタートアップの採用担当者は「自社とどんな企業がバッティングしているのかを知りたい」と話していた。採用現場でのライバル企業を知り、次年度以降の採用戦略につなげる思惑もあるようだ。
疑問その(3)「質問の意図がわからない」
ある就活生は面接で、「ドラえもんの道具を使えるとしたら、何を使いますか?」と質問され、困惑したという。
他にも「何かひとつ無人島に持っていくとしたら?」「自分をすしのネタに例えると何?」などと聞かれた例もあったそうだ。
まるで心理テストのような質問だ。準備万全で臨んだはずの面接でこんな変化球が飛んできたら、対応に苦慮しそうだ。
企業がこうした質問をする理由について、ある採用コンサルタントは「ありきたりの質問では出てこない学生の本音を探りたいからでは」と分析する。
いまや選考での質問内容などの情報は交流サイト(SNS)であっという間に拡散する。学生はそうした情報を基に事前に答えを準備するため、「学生の『素』の部分が分かりにくい」。そこで変化球をぶつけた時のとっさの対応をみるというわけだ。
ただ、この手の質問は、安易に繰り出すと、就活生が企業にマイナスイメージを抱いてしまう場合もありそうだ。まずは採用担当者が回答のお手本を見せて、就活生の緊張をほぐすぐらいの配慮がほしいところだ。
疑問その(4)「面接官から『最後に質問ありますか』と聞かれた時は、質問した方がいいの?」
これも就活生からよく聞かれる疑問のひとつ。実に悩ましい問題だ。
企業の公式サイトで調べればすぐに分かるような初歩的な内容を質問すれば、「そんなことも知らないのに、本当にうちで働きたいの?」と疑いの目で見られるかもしれない。
とはいえ、質疑応答は貴重な機会だ。就活生はできる限り頑張って、何か質問をした方がよい。
この最後の質問を必ず設けているのが、損害保険ジャパン日本興亜だ。面接の最後には必ず、質問があるかどうかを聞くという。採用担当者は「面接は学生を一方的に評価する場ではない。質問を通じて自社への理解を深めてもらい、できるだけ満足して帰ってもらいたい」と話している。
もっとも、注意すべき点がいくつかある。
例えば「逆質問」。最近は面接官に「私をどう思いますか」と質問する学生もいるという。就職コンサルタントの村山涼一氏は「役員との最終面接で逆質問をする学生も多いが、基本的に意味のある質問をすべきだ」と注意を促している。
最近はワークライフバランスを重視する傾向から、福利厚生について質問する学生も多いようだ。ただ、社員寮や働き方の質問は面接後に人事に聞くこともできる。谷出氏も「面接官に聞くべき質問かどうかを考えてほしい」と指摘する。
また、最後の質問の場面で、自己PRを図る就活生もいるが、「コミュニケーション能力がない」と見られることもある。ケース・バイ・ケースで慎重に見極めたい。
面接は就活生と採用担当者の真剣勝負の場だ。ただ、緊張のあまり思ったように話ができず、後から悔やんだり、頭を抱えたり、といったこともあり得るだろう。
ある採用担当者は「面接官をしていると、学生時代を思い出す」と懐かしむように話していた。勝負の場といっても、面接官は本質的に敵ではない。就活生を後輩として迎え入れたい思いから、質問している。
採用面接はビジネスパーソンの誰もが歩む道。必要な準備をこなした後は、「ちょっと年上の先輩と談笑する」くらいの心持ちで、リラックスして本番に臨んでほしい。
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